国内コールドチェーンの現状 BUKKEN
【国内コールドチェーンの状況】
日本の低温物流はいまどう変わっているのか
コールドチェーンとは、冷蔵・冷凍が必要な製品を、保管・輸送・荷捌き・配送の各段階で適切な温度管理を維持したまま流通させる仕組みのことです。日本でも食品、医薬品、外食、小売、ECの拡大に伴って、このコールドチェーンの重要性はますます高まっています。経済産業省は2024年12月に、日本主導でBtoBコールドチェーン物流サービスの国際規格「ISO 31512」が発行されたことを公表し、温度管理された高品質物流の重要性を改めて示しました。
いま国内コールドチェーンで起きている変化
日本のコールドチェーンは、昔ながらの「大量保管型」から、多品種・小口・高頻度・短リードタイム対応型へ大きく変わっています。国土交通省の資料では、輸入食材・食品の増加、低比重の冷凍食品や半製品の増加、コンビニ等での多品種加工食品販売の増加によって、港湾型倉庫の保管容積拡大、流通加工スペースの拡大、リードタイム短縮、多頻度・少量配送、地域配送拠点の増加が進んでいると整理されています。
つまり、いま求められているのは「冷やして保管するだけの倉庫」ではありません。
流通加工、仕分け、荷揃え、配送まで含めて温度管理できる体制が国内コールドチェーンの中心になりつつあります。
国内の冷蔵・冷凍倉庫は増えているのか
足元では、営業冷蔵倉庫の在庫量も所管容積も増加傾向です。国土交通省資料によると、2011年以降、在庫量は平均で年1.16%、所管容積は年1.33%増えてきました。また、長期的にも、国産減少に伴う輸入増加、冷凍食品の増加、家族構成や消費生活の変化を背景に、冷蔵倉庫の貨物総量は漸増してきたとされています。
ただし、この統計には注意点もあります。国交省は、営業冷蔵倉庫の統計には自家用倉庫、物流不動産、貨物運送事業者の一時保管が含まれておらず、さらにECも統計上は識別しにくいとしています。つまり、表に見える数字以上に、実際の現場では需給が動いている可能性があります。

国内コールドチェーンの課題は何か
最大の課題は、やはり物流人材不足です。国土交通省によると、トラックドライバーの有効求人倍率は全職業平均の約2倍とされ、対応を講じない場合、2024年度には輸送能力が約14%不足し、2030年度には約34%不足する可能性があるとされています。国内貨物輸送はトンベースで自動車が9割超を占めるため、この問題はコールドチェーンにも直接影響します。
コールドチェーンは常温物流よりも、温度管理、荷待ち時間短縮、迅速な積み込み、ドック周辺の温度変化対策など、現場オペレーションの精度がより強く求められます。つまり、人手不足がそのまま「品質リスク」にもなりやすい分野です。経産省のISO 31512公表資料でも、コールドチェーン物流サービスは単なる輸送ではなく、適切な温度管理を実現する要求事項を含むサービスとして位置付けられています。
国内コールドチェーンは、なぜ今さらに重要なのか
背景には、食品流通の変化があります。国交省資料では、魚介類の約5割、野菜も加工・業務用中心に約2割が輸入であり、食料自給率はカロリーベースで38%とされています。輸入食品の増加は、港湾での通関・検疫・保管機能を含めた低温物流の重要性を高めています。
加えて、コンビニ、量販店、ドラッグストア、ECなど販売チャネルの多様化により、低温物流は「工場から店舗へ運ぶ」だけでなく、生活者の細かな需要変化に応えるインフラへ変わっています。

これからの国内コールドチェーンに必要なもの
これからの国内コールドチェーンで重要になるのは、単なる倉庫面積の拡大ではありません。
ポイントは3つあります。
第一に、保管と配送の一体設計です。
多品種少量・短納期化が進むなか、冷凍・冷蔵倉庫は保管だけでなく、仕分け、流通加工、配送ハブとしての機能が求められます。
第二に、温度管理品質の見える化です。
経産省のISO 31512は、倉庫事業者・運送事業者が適切な温度管理を実現するための要求事項を示しており、今後は「冷やしているつもり」ではなく、「温度管理が証明できること」がますます重要になります。
第三に、人手不足を前提にした運営設計です。
輸送能力不足の見通しが出ている以上、これからは人海戦術ではなく、拠点配置、作業標準化、動線改善、DX、パートナー連携によって、少ない人数でも品質を維持できる仕組みが必要です。

まとめ
国内コールドチェーンは今、確実に重要性を増しています。
輸入食品の増加、冷凍食品の拡大、多品種少量化、ECの浸透によって、低温物流はますます高度化しています。一方で、統計に表れにくい需給逼迫や、人材不足、輸送能力不足といった構造課題も強まっています。
これからのコールドチェーンに必要なのは、
**「保管できること」ではなく、「品質を守りながら、止めずに動かせること」**です。
物流会社にとっても、荷主企業にとっても、国内コールドチェーンは単なる物流機能ではなく、事業継続と顧客信頼を支えるインフラになっています。


